体のどこかに痛みやコリがあると、無意識にそこに手を当てて、もんだりさすったりする。この「手当て」の延長にあるのが、手や指を使って体をほぐす、いわゆる“マッサージ”だ。だが、一口でマッサージと言っても、指圧やあん摩もあれば、“類似品”もある。

 日本あん摩マッサージ指圧師会の会長、時任基清さんは指圧やあん摩、マッサージなどの手技の有効性について、こう述べる。

「手技によって細かな違いはありますが、おしなべて、血液やリンパの循環がよくなり、うっ血による冷えやむくみが取れます。また、自律神経の緊張状態が緩和されるので、副交感神経が優位になり、便秘や下痢、腹痛、膨満感などの胃腸症状や、不眠、疲労など、自律神経失調によるさまざまな症状を改善させることも可能です」

 しかし、科学的な有効性、つまりエビデンスはほとんどないのが現状だという。その理由について漢方や鍼灸などの東洋医学や民間療法に詳しい日本薬科大学学長で百済診療所(東京都中央区)院長、丁宗鐡(ていむねてつ)医師はこう話す。

「マッサージやあん摩、指圧で得られるのは、受けた人の主観的な改善効果であることが多いので、科学的根拠としてデータで表しにくいのです。レストランの料理と一緒で、食べた人によって味の評価が違うのと、ある意味似ているところがあります」

 時任さんも、有効性の検証が課題だと言う。「当会では現在、マッサージが脳波にどう影響を与えるかなど、いくつかの健康増進効果について、大学などの研究機関に研究を委託している段階です。そうした研究で有効性がデータとして明らかになることを、期待しています」。

週刊朝日 2013年5月24日号