日本人が長寿である理由のひとつが、入浴する習慣と言われる。全国至るところに湧く温泉を積極的に活用しよう。温泉療法に詳しい国際医療福祉大学大学院の前田眞治教授は話す。

「入浴で体の『深部体温』が1度上がると、痛みを感じる神経が鈍くなり、関節や筋肉の痛みが和らぎます。傷ついた細胞を修復するたんぱく質が生まれ、免疫力もアップする。寝たきり原因第1位の脳卒中や第2位の骨折などを遠ざける、自然の力があるんですよ」

 温泉を選ぶ際の基準になるのが効能だ。泉質に関係ない「一般的効能」と「泉質別効能」に分かれる。

「『硫黄泉』と『炭酸泉』は老廃物の排出を促し、血圧を下げてくれます。泉質に“塩”の文字が入っていれば『塩類泉』で、高い温熱効果があります。低刺激の単純温泉は心のストレスに良いと言われています」(前田教授)

 各温泉には「温泉成分分析表」の掲示が義務づけられている。表を参考に自分に合った温泉を探すのも楽しみ方のひとつだ。

 ここで、日本で多い泉質の塩類泉を例に、理想的な入浴法を紹介する。

「朝は9時から10時を目安に5~10分、少し熱めのお湯に入ります。夜は9時ごろ、ゆっくりと浸かりましょう。目安は40度の湯で15分程度です。手足が温かいうちに布団に入れば、副交感神経が刺激されてリラックスし、体温上昇が免疫機能や抗炎症作用を強めます」

 寒い冬場に限らず、一年を通じて、楽しみながら温泉に浸かりたい。心も体も癒やされ、年齢を重ねるなかで蓄積してきた疲れが、お湯の中に優しくとけていくはずだ。

週刊朝日 2013年5月17日号