マルちゃん 「マスターズ」初出場時の興奮を語る 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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マルちゃん 「マスターズ」初出場時の興奮を語る

連載「マルちゃんのぎりぎりフェアウエー」

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 週刊朝日で始まったプロゴルファー丸山茂樹氏の新連載「マルちゃんのギリギリフェアウエー」。記念すべき第1回は、先日開かれた「ゴルフの祭典」マスターズ・トーナメントについて。

*  *  *
 まあ毎回毎回、よくプレーオフになりますよね、あの大会は。今回はプレーオフ2ホール目でアダム・スコット(32)がアンヘル・カブレラ(43)を下して、オーストラリア勢としての初優勝を飾りました。カブレラ、同い年で誕生日も同じなんです。複雑だなー。ま、これはさておいて。

 最終ラウンドの18番ホールでお互いがバーディーをとりあってプレーオフに持ち込む。あの劇的なドラマが、あのステージでは生まれるんですよねぇ。

 正座してテレビを見ていた僕、正直、追いついてプレーオフに持ち込んだカブレラが有利かと思ってました。先にホールアウトしたスコットは顔色ひとつ変えなかったですが、内心どうしたって、「なんだよ、プレーオフかよ。勘弁してよーーー」って気持ちが生じるもんですから。

 でも、あの日のスコットは違ったね。その証拠がプレーオフ1ホール目のティーショット。

「カブレラ? 俺が普通にやれば負けるわけない」「見てろよ、びっくりしろよ、俺のポテンシャル」ぐらいの心のこもった一発でした。ガッツリとフェアウエーの真ん中をキープ。2ホール目の10番、セカンドショットでも、カブレラがピシャーッとイメージ通りのショットでピン5メートル。

 でもね、スコットはさらっとピン3メートル。あれはねえ、タイガー・ウッズと組んで何度もマスターズを制してるキャディーのスティーブ・ウィリアムズが、いい言葉をかけてると思うんですね。高性能マイクも拾えないひそひそ声で。彼の力、大きかったと思う。

 スコットは去年の全英オープンで最終日にずっこけて、2位に終わりました。それを見てるから、今回の優勝は僕も涙が出ましたよ、久々に。またね、最高にいい男なんだな、これが。ゴルフ界にはいじわるなヤツも偏屈なヤツもいるけど、こいつはいいヤツ。

 ゴルフの神様、いるんだよ。スコットに、「楽には勝てないぞ。この喜びを次につなげなさい」とのメッセージを発していたような気がしますね。

 マスターズは僕にとっても長らくの夢でした。11歳の春、1981年の大会をお父さんとテレビ観戦したんです。トム・ワトソンが2度目の優勝を果たすんですけど、彼が最終ラウンドの18番、グリーンへ向かう光景が、僕の心をわしづかみにしたんです。

 目に浮かびます。フェアウエーを闊歩(かっぽ)するワトソンを、左後ろから撮った映像が。ワトソンが歩いていくと、ダーッとコース両側に詰めかけたパトロン(観衆)が順番に立ち上がっていくんです。ワトソンは右手を挙げて、応える。

「やってみてぇーーー」

 だから最初に出場した98年はもう、大はしゃぎ。スタートの4日前に現地入りして、すぐに憧れの会場である「オーガスタ・ナショナル」へ向かったんです。レンタカーで選手や関係者しか連れない並木道「マグノリアレーン」に入ったところで、もう唖然。

 白亜のクラブハウスを抜けると、コースが広がる。あの雄大さ、偉大さといったら、そりゃもうビックリしますよ。想像以上のアップダウンに、あとはもう緑、緑、緑、緑、緑! もう一回言います。緑、緑、緑、緑、緑! 北海道も負けちゃう。緑、緑、緑、緑、緑!

 ロッカールームで、僕は大好きなチョコレートチップクッキーをバクバク食べてたら、係員が「クッキーモンスター」なんて呼び始めて、それが周りの選手にも広がって。「よし、これで覚えてもらったぞ。しめしめ」って思いましたよね。

週刊朝日 2013年5月3・10日号


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丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表ヘッドコーチを務める

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