日本発の新植物からバイオ燃料をつくる。週刊朝日2012年10月5日号で特報した計画が一歩前に進んだ。この新植物を使ってインドネシアで来年、燃料の本格生産を始めることになったのだ。これが軌道に乗れば、世界のエネルギー地図が変わるかもしれない。インドネシア科学院のルックマン・ハキム長官が将来像を語った。

「インドネシア経済は今後も順調に発展していき、2025年にはGDP(国内総生産)が現在の4倍になると見込まれています。エネルギーも食糧も需要が大きく伸びるでしょう。その供給力を高めるのに、日本発の新植物スーパーソルガムが重要な役割を果たすことになるのです」

「スーパーソルガム」は、イネ科のソルガムを掛け合わせて品種改良された。日本勢が産学協同で開発したものだ。ソルガムは、古くはコーリャン(高粱)と呼ばれていた。早く育つのが特徴で、種まきから4カ月で高さ5メートルになる。地面から15センチほど残して茎を切っても、そこからまた育ち、3、4カ月で再び4メートルになる。さらに切っても、3メートルまで大きくなる。

「いまインドネシアでは、ガソリンは1リットル=45円ぐらいで売られています。本来は100円ほどしますが、ガソリンや電力には国が補助金を出し、価格を低く抑えています。
 一方でスーパーソルガムによる燃料は、1リットル=50円を切ることがひとつの目標です。栽培面積を広くするほど効率がよくなってコストが下がるので、計算上の話ですが、3千ヘクタールで育てれば、1リットル=45円となる見込みはあります。

 つまり、石油を植物由来のバイオ燃料で置き換えることは、不可能ではないのです。わが国はいまのところ原子力発電所がないこともあって石油に大きく依存していますが、2030年に、エネルギー消費の8割をバイオ燃料で占めたいと考えています」

週刊朝日 2013年5月3・10日号