政権発足から間もなく4カ月になるというのに、安倍晋三首相(58)の「公邸への引っ起し」が一向に進まない。北朝鮮のミサイル発射の可能性が高まっても、淡路島や三宅島で震度6弱、5強の地震が相次いでも、どこ吹く風。ひたすら東京都渋谷区の自宅から15分かけての“車通勤”だ。

 2005年に今の首相公邸になって以来、首相就任から公邸入居までの日数がもっとも長かったのは麻生太郎元首相(72)で117日。4月21日にはこの記録に並ぶ。

「『公邸は広くて落ち着かない』と最近周辺に漏らしています。前回は首相就任後2カ月で入りましたが、すぐに嫌気が差し、週末は頻繁に自宅に帰っていました。本人が自宅好きということのほか、昭恵夫人も引っ越しに乗り気ではない。同居している84歳の母親と離れ離れになることも首相は気にしています。4月末からはロシアやサウジアラビア訪問で忙しく、大型連休は休養が必要なので、公邸入りはますます延びるでしょうね」(官邸関係者)

 あまりのマイペースぶりに、自民党幹部からは「不測の事態が起きて対応の遅れが問題となる前に、いい加減に引っ越しするべきだ」との声も上がっている。こんなときこそ、首相と行動を共にする6人の秘書官が「公邸入り」を強く進言するべきだが、関係者によると彼らはむしろ、「自宅のほうが身体が休まりますよ」と車通勤を首相に勧めているらしい。危機管理上、問題があるのは明らかなのに、ナゼなのか。

「車通勤は首相を独占する絶好の機会だからです。秘書官はみな50歳前後で、経産省や財務省などから派遣された審議官クラスのエリート。首相の出勤時と帰宅時は一緒に車に乗り込み、サシで話をします。表向きは車内で、予算や政策についてレクをしていることになっていますが、実際は各省の思惑どおりに政策が進むよう吹き込むケースが多いのです」(官邸担当記者)

 2月に記者から「公邸入りは3月か」と聞かれ、「まあ、だいたいそれぐらいかな」と答えていた。実際には3月初旬に一度、首相が引っ越しを考えたことがあったというが、秘書官が「河口湖の別荘で静養を」と強く勧め、首相もそれに乗ってしまったという。

 絶好調の安倍首相。公邸入りの遅れが、つまずきの一歩にならなければいいが。

週刊朝日 2013年5月3・10日号