東電「賠償金算定」の驚愕の実態を潜入ルポ 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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東電「賠償金算定」の驚愕の実態を潜入ルポ

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週刊朝日#原発

 東京都江東区、りんかい線の国際展示場駅前のビルが、その“仕事”の現場だった。業務内容は、福島第一原発事故をめぐる東京電力の補償業務のデータ入力。実際に派遣社員として働いたジャーナリストの宮田賢浩氏が、その驚愕の実態をレポートする。

*  *  *
 実務研修は「マウスの操作」から始まった。派遣社員は、20人前後を1班として1フロアに12班、総勢二百数十人が縦約20メートル、横約50メートルのだだっ広い部屋に配置され、それが数フロアにわかれているという大所帯。とにかく手当たり次第に雇ったのか、「フォルダ」の意味すらわからない、というおばちゃんも大勢いた。パソコンを操作してファイルを開く、という作業を全員がのみ込むのに30分はかかっただろうか。

 基礎研修の後も、作業内容が変わるごとに1日から数日の研修があった。そこで強調されるのが、「マニュアル遵守」だった。とにかくマニュアルどおりに進行するよう繰り返し求められ、自らの判断を決して入れないように、と注意された。しかし、いざ本作業になると、このマニュアルから次々と不都合が噴き出したのだ。

 たとえば、賠償請求には「被災証明書」、もしくは「住民票」が必須とされたが、これらの書類と手書きの請求書の内容が違うことがある。家族構成が違う、旧漢字と常用漢字で違っている、生年月日などの記載ミス、未記入項目がある、旧姓になっている、そもそも住民票がなくて戸籍謄本だったり、運転免許証だったり、母子手帳だったり……。

 こうした想定外の事態が起きると、まずはその場で、派遣会社の社員が会議する。それで決まらなければ、東電社員と協議する。これが早くて数時間、長いと数日もかかり、その間、作業は中断される。しかも、午前の方針が午後には正反対に改正、まさに朝令暮改が日常茶飯事で、そのたびに派遣社員から失笑が漏れた。

 なかでも驚いたのは、記入された住所に「大字」「字」が入っていないだけで、無効にするかどうかを巡って、数日間もめたことだ。最終的に、これらはそのまま作業することになったが、たとえば「福島県」や「双葉郡」が抜けた書類は最後まで無効のままだった。その理由を派遣会社の社員に問うと、「(その町名が)他県にもあるかもしれないと、上から(東電から)言われている」という常軌を逸した答えが返ってきた。

 こうした不条理を東電社員に訴えようとすると、フロア長の派遣会社社員から、「東電の人にはむやみに話しかけるな」と強い指導が入った。まるで派遣会社の社員は植民地の役人で、われわれは奴隷のような関係であった。

週刊朝日 2013年5月3・10日号


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