相続の際に、相続人や遺産の確認、財産目録の作成、遺産分割協議のアドバイス、財産の名義変更などサポートしてくれる信託銀行の「遺産整理業務」。そのニーズは徐々に高まっている。信託銀行などが加盟する信託協会によれば、国内の遺産整理業務の引受件数は、2011年度で3147件。10年前(01年度、1295件)と比べると約2.4倍となっている。

 福岡県内に住む77歳の小林文枝さん(仮名)の場合、最終的にかかった金額は、A信託銀行の遺産整理報酬160万9907円に加え、司法書士の報酬が約40万円、税理士の報酬が約50万円。総額は250万円を超えた。小林さんは、「100万円くらいかかるということはA信託の担当者から聞いていましたが、司法書士などの費用も含めた額だと思っていたんです。最初から250万円とわかっていれば、たぶん契約しなかったと思います」と話す。

 また遺産整理報酬の額に関しても、こう疑問をぶつける。「実際にA信託にしてもらったのは、預金や証券の確認と財産目録の作成、それに名義変更くらい。業務の中には財産評価や相続税申告もありますけど、実務は司法書士や税理士がしているのですから、それで160万円ははたして適正価格なのでしょうか」。

 適正かどうかは、依頼人の価値観にもよるだろう。ネット上では、数十万円で信託銀行と同様のサービスをするとうたう業者も多いが、安易な比較はできない。ただ、信託銀行の報酬が「高い」と感じているのは小林さんだけではない。国民生活センターによれば、「姉が信託銀行に遺産整理業務を依頼したが、その報酬が高すぎる」といった苦情が過去に寄せられている。

週刊朝日 2013年4月19日号