アベノミクスに沿って、日銀は物価上昇率2%を目標に掲げている。しかし1980年代後半のバブル時代でも、消費者物価指数(CPI)はほぼ2%以下ということもあって、「CPIインフレ2%を達成するのは至難の業だ」という認識も少しずつ広まってきているようだ。「伝説のトレーダー」の異名を持つ藤巻健史氏は、こうした政策が「正しいとは思わない」と指摘する一方、CPI 2%を「簡単に達成させる」方法を次のように話す。

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 私は、いままで述べてきたように、CPIによるインフレ目標を設定することが正しい政策だとはまったく思っていない。しかし、その一方で、「バブルでも達成できなかったのだから2%のCPIインフレは達成不可能」という論も間違いだと思っている。

「インフレにせよ」というのが日銀総裁の唯一の使命あり、「あとはどうなってもいい」というのであれば、私はCPI2%をいとも簡単に達成させてみせる。

 1ドル=180円の円安にするだけでよい。「マイナスの需給ギャップ(供給が需要より大きい)が存在する現状で、需要を大きく増やすことなど難しい」とおっしゃる方は、鎖国経済しか考えていない。1ドル=180円になれば、世界中の人は優秀で安い日本製品を争って求めることになる。途端に需要過多となり、すさまじいインフレだ。ただし、ここまで累積赤字がたまっているときに大胆な円安誘導(その方法はいつも述べているつもりだ)をすれば、円安は止まらなくなり、明日は1ドル=1千円で、ハイパーインフレの時代になるでしょうけどね。

週刊朝日 2013年4月12日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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