難関大学の合格者数は「私高公低」と言われ、圧倒的な私立優勢の状況が続く。では今後、昔のように公立が私立や国立に肉薄することはあるのだろうか。『東大合格高校盛衰史』(光文社新書)の著者で、教育ジャーナリストの小林哲夫氏はやや懐疑的だ。

「灘や開成のような私立トップ校の人気は落ちないでしょう。生徒の親世代が『公立はダメだ』という認識で自身の学校生活を送ってきたからです。ただ、公立復権のカギを握る公立中高一貫校は、いずれ新興や中堅の私立を凌駕するかもしれません」

 都立の桜修館(おうしゅうかん)、区立の九段中教など歴史の新しい中高一貫校が、少しずつ実績を上げている。景気が回復しなければ経済的な面からも公立の需要は高くなるだろう。『47都道府県の名門高校』(平凡社新書)の著者で評論家の八幡和郎(やわた・かずお)氏は、真の公立復権には伝統の継承が不可欠だと指摘する。

受験への心構えやノウハウを伝える意味でも、受験校の先生は受験校の卒業生であることが望ましいと思います。それが、その学校の卒業生であればなおいい。京都の洛南では、卒業生を積極的に採用していると聞きます。公立では人事異動の関係で難しいかもしれませんが、卒業生も含めて伝統をつくっていくという意識が大切です」

 公立の膳所(ぜぜ・滋賀)の出身である八幡氏は、いずれ公立校の価値が見直される時が来るとみている。日本のノーベル賞受賞者をみると、19人中16人が公立だ。新興私立校がなかった時代とはいえ、無視できない差だと八幡氏は言う。

「すべてとは言いませんが、私立の受験校では、すぐに役に立つことを教える傾向があるのではないでしょうか。一見、無駄なことも学ぶ公立校の姿勢が価値を帯びてもいいと思います」

週刊朝日 2013年4月12日号