亡くなる5日前の3月22日午後、坂口良子さん(享年57)の姿は病室ではなく、都内のホテルにあった。イメージキャラクター契約を結んでいる某化粧品会社と契約更新するため、やってきたのだ。その場にいた担当者が明かす。

「坂口さんは、ご主人と一緒に来られました。かなりおやせになり、ご病気なのは一目瞭然でした。車椅子に乗らず、ご主人に支えられ、やっとの感じで歩いていました」

 坂口さんは娘と共に、この化粧品会社と2年前、契約を結んだという。「契約は4月末まででしたので、契約更新のためにお会いし、坂口さんから『やります』というお返事をもらいました。消え入りそうな小さな声でしたので、体を乗り出し、耳を近づけて、何回か聞き直す感じの会話でした」(担当者)。

 マスクと花粉症用の枠のついたメガネをした彼女と担当者は1時間弱、話をしたという。アイスコーヒーに口を少しつけ、こうため息を漏らしたという。「とにかく食べられない。肺炎をこじらせちゃって」。

 別れ際、担当者が「お大事に」と声をかけると、「あと1カ月もすれば元に戻れると思うんです」と力なくほほ笑んだという。

週刊朝日 2013年4月12日号