日本の大学最高峰として双璧を成す東大と京大。しかし、文化や芸術の世界では、東大のほうが圧倒的に優位に立っているようだ。

 人文・社会科学系のノーベル賞を比較してみると、東大出身者では1968年、川端康成氏(文)が文学賞を、74年には佐藤栄作元首相(法)が平和賞を受賞した。94年にも大江健三郎氏(文)が文学賞を受賞している。一方の京大は、自然科学系以外での受賞はない。

 また、芥川賞の受賞者は東大が19人で京大は4人にとどまる。直木賞も東大は13人だが、京大は1人だけだ。文学の世界で東大がこれほど強いのはなぜだろう。東大文学部出身で、文芸評論家の鈴村和成・横浜市立大名誉教授が説明する。

「特に70年代以前は、文学の世界での“赤門”のステータスは非常に大きかったのです。文学の世界に入るために東大、というのが金看板だったんですよ。東大の文学部、とりわけ英文科を出れば、すでに文士としてのパスポートを得たようなものでした」

「花腐し」で芥川賞を受賞した松浦寿輝氏(東大教養)もこう振り返る。「小説や文学には知の世界の基盤が必要です。東大の授業は、その教養の扉を開いてくれた。ボードレールの専門家である阿部良雄先生など、当時脂の乗り切った先生方が、アーベーセーから教えてくれるんですから。見田宗介先生に井上忠先生と、それはもう多士済々でした」。

週刊朝日 2013年3月29日号