日本航空(JAL)のけん引した稲盛和夫名誉会長が今期限りで取締役退任する。会長を引き受けたストレスについてなど、稲盛氏にインタビューした。

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――ずっと禁煙していたのに、JALの会長になってまた、たばこを吸うようになったそうですね。

 JALに行ってストレスがたまり、一服して心労を紛らすようになりました。ところが1月末に、ダボス会議(世界経済フォーラム)の主催者、クラウス・シュワブ氏から経営哲学を講演してほしいと招かれ、スイスへ行ったところ、会場内は喫煙所がなく、零下10度の屋外でたばこを吸う羽目になった。鼻水は出るわ、のどは痛いわ、風邪はひくわで、金輪際やめようと決めました(笑い)。まあ、業績も安定してきたので、もういいですよ。

――この3年間に日本を見舞った最大の事件は東日本大震災でした。被災地の復興の遅れが指摘されていますが、どうすれば早期に再建できるでしょうか。

 本当に不思議なのは、地震や津波で壊滅した場所の多くが、いまだに更地で、建物がほとんどないことです。暴論かもしれませんが、終戦のときみたいに、被災した人々にバラックでも何でもいいから家を造らせればいいのにな、と思います。非常時なので、お金がないなら、政府が復興資金を低金利でどんどん貸せばいい。物事を決めるのに時間ばかりかかって、被災者の気持ちがなえていくのが、一番よくないですよ。

――昨年、産業能率大の「社長が選ぶ今年の社長」で第1位になりました。

 いやあ、もう81歳なので、一線からは身を引かせてもらいたい(笑い)。

週刊朝日 2013年3月22日号