小林賢太郎さんとユニット「ラーメンズ」を組む、片桐仁さん。コントによる笑いを徹底的に追求し、2009年以来公演を行っていないにもかかわらず、今も熱狂的なファンを持つ。

「38年間やる気のなかった片桐さんが、今年ようやくやる気を出しましたね」と、占い芸人のゲッターズ飯田さんから言われたそうだ。近年では、役者としての活動が目立つ片桐さんが、今年は、寺山修司の伝説的な舞台に挑むことになった。演出は、「ヂャンヂャン☆オペラ」という独特の表現を特徴とする「維新派」の松本雄吉さん。時を同じくして、趣味で作り続けていた粘土作品を展示する個展も、パルコミュージアムで開催される。

「稽古が始まる1カ月前に、共演する八嶋(智人)さんと一緒に、台本の読み方のようなものを説明されました。チンプンカンプンなぐらい、見たこともないような複雑な台本で。今もまだ戸惑っています(苦笑い)。あと、『片桐くんはリズム感がよくないと聞いているので、メトロノームのアプリを買って、7拍子を身体に叩き込んでください』とも言われました」

 お笑いをやっているときは、どうしてもお客さんの反応ありき。なるべく噛み砕いて伝えることを心がけていた。

「それが今回の舞台は、混沌から始まって、最終的には明るいほうに向かっていくんだけれど、“どう思うかはあなた次第です”みたいな、突き放した終わり方になっていて……。自分でもどんな舞台になるのか、全然わからない。ただ、思いがけない作品や空気が生まれていくのが、舞台をやっている醍醐味だったりするので。とにかく、何か得体の知れないエネルギーは僕も感じるし、観に来たお客さんにも、それは感じてもらえるんじゃないかと」

 毎回、舞台初日は極度に緊張するが、それでも、「ラーメンズ」の舞台のときの緊張にはかなわないという。

「それが原点ですからね。学生時代に相方と組まなかったら、今の自分はなかった。役者として様々な人や作品と関わることも、子供番組への出演も、ラジオも雑誌の連載も、すべてはいずれ、ラーメンズの活動に役立つものであればいいなと思っているんです」

週刊朝日 2013年3月22日号