日本の伝統的な調味料のひとつである味噌。その歴史を紐解くと、現代のスキー場の名物との意外な関係が見えてくる。料理研究家の柳谷晃子氏は次のように説明する。

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 日本を代表する伝統的調味料といえば味噌。「噌」の字には「かまびすしい、にぎやか」といった意味があり、味噌はきわめて多彩な味が楽しめるため、この字が使われているそうです。

 味噌汁の誕生は室町時代とされています。みなさんはテレビ朝日系で放送された「信長のシェフ」をご覧になりましたか。主人公のケンが戦場で疲弊した兵士に味噌を入れたおにぎりを食べさせたり、それを湯漬けにしてみせるシーンがありました。一般的には、当時の味噌は今よりも大豆の粒がたくさん混ざっていたので、すり鉢で味噌をすり、お湯をさして飲むスタイルだったそうです。

 民俗学では、農耕をつかさどる山の神様は味噌を好むとされています。峠の茶屋やスキー場などで味噌田楽や五平が名物になっている所が多いのは、山の神様への供物として味噌を供える風習が原点と考えられています。それが、やがて里にまで伝わり、田の神様も味噌を好むと考えられるようになって、豊作祈願に味噌を供える地域や、お清めに塩ではなく味噌を使う地域も生まれました。

週刊朝日 2013年3月22日号