依然として先行きの見えない日本の原発問題。ジャーナリストの田原総一朗氏は「原発ゼロ」を打ち出した政党は惨敗し、「10年間でエネルギーのベストミックスを考える」という、何ともいい加減な態度をとった自民党が衆院選に勝利したことを指摘する。そして、原発ゼロを訴えていた民主党にこのように働きかけていたことを明かす。
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いったい日本の原発は今後どうなるのか。
実は民主党政権時代、トップたちは世論の動向を気にして「原発ゼロ」ばかり訴え、現存する原発とその将来の問題について、誰も責任を持って取り組もうとしなかった。
私は仙谷由人元官房長官に「とにかく誰かが責任を持たなければならない。あなたが責任を持つべきだ」と強く訴えた。結局、民主党内では仙谷氏一人が責任を持って原発問題に取り組み、原発推進派だと誤解されて、衆院選で落選してしまった。
いずれにせよ、問題はこれからである。現在も日本の原発は2基を除いて停止してはいるものの、全部で54基もあるのだ。
再処理については、日本ではまだ技術が完成していないが、イギリスやフランスでは完成している。もし本気で再処理したいのなら、なぜ海外から技術を導入しないのか。相変わらず運転再開のめどが立たない高速増殖炉「もんじゅ」にしても、1960年代の古い技術でつくられたものだ。早く実用化したいなら、なぜ最新の技術に切り替えないのか。
また、福島第一原発の事故によって、現在の原発には少なからぬ欠陥があることがわかった。今後も原発の利用を推進していくならば、より安全な、新しい原発を開発する計画があってしかるべきだろう。
ところが、日本の電力会社やメーカーのどの担当者に聞いても、そうした計画は存在しない。ただし、「アメリカやフランスではあるらしい」という。これでは、あまりにも無責任な話ではないか。
※週刊朝日 2013年3月22日号