すれ違いざまにふわーっと漂ういいにおい。ここ数年、洗濯物を柔らかく仕上げる“柔軟剤”で香りを楽しむ人が増えている。ブームの火付け役となった米国P&G社の「ダウニー」。日本の各メーカーも香りのラインナップを増やしたり、香りの改良を重ね、力を入れている。

 こうした各メーカーの動きは日本の柔軟剤市場全体を拡大させた。市場規模は2008年には約850億円だったが、12年には約1000億円に急成長している。

 この「香りつき柔軟剤」ブームで特筆すべきことは、これまで香水や化粧品のにおいとはあまり縁がなかった男性にも愛用者が広まったことだという。ライオンのファブリックケア事業部ブランドマネージャーの加藤里佳さんはこう話す。

「家族全員の洗濯に香りつき柔軟剤を使っているからという場合もありますが、柔軟剤による清潔感のある香りを、積極的に楽しむ男性が増えています」

 同社が柔軟剤を使用している20代~50代の主婦に「夫から最も香ってほしいにおいは?」という質問をしたところ、3割が「柔軟剤の香り」と回答した。洗濯をする主婦が夫の服に柔軟剤の香りをつけ、それがきっかけで夫が柔軟剤の香りを愛用し始める――そんな仕組みもありそうだ。

週刊朝日 2013年3月15日号