銭湯好きから「キング・オブ・銭湯」の称号を与えられている北千住の「大黒湯」。北千住には昼から飲めるお店も多く、「昼のセント酒」にはうってつけの街だ(撮影/dot.編集部)
銭湯好きから「キング・オブ・銭湯」の称号を与えられている北千住の「大黒湯」。北千住には昼から飲めるお店も多く、「昼のセント酒」にはうってつけの街だ(撮影/dot.編集部)

 中高年を中心に「明るいうちに銭湯に入り、軽く酒を飲んで帰る」のがブームらしい。そのきっかけとなった本が一昨年に発売された『昼のセント酒』(カンゼン)だ。昨年末には、そのパワーアップ版ともいうべき『ちゃっかり温泉』(同)も出た。著者は人気コミック『花のズボラ飯』などの原作者として知られる久住(くすみ)昌之氏。担当編集者の高橋ちひろ氏は言う。

「おかげさまで30~40代の男性を中心に『昼に銭湯行って飲みに行くのにハマってます』というメールをいただくことが多いですね」

 著者の久住氏にその心得を聞いてみた。が、意外にも「心得なんてない」とのお返事。そう言わず、何とかご指導いただきたいのだが……。

「まあ、一つ言えるとしたら、『いまの自分』というのをもっと大事にしたほうがいいってことですかね。そのときの季節や天気次第で、『今日はどうしよう』ってその瞬間の気持ちのままに、銭湯や居酒屋を選ぶところがいいんです」と久住氏。心得や掟など気にせず、「いまの自分」を大事にする。なんと哲学的な答えだろうか。

 また久住氏は「生きていると、イライラしたり、落ち込んだり、いろんな気持ちになる。でも、明るいうちに銭湯に行き、湯船につかって『帰りに、どこで飲もうか』って考えていると、気持ちよくなって、たいていのことはどうでもよくなる」とも話す。

週刊朝日 2013年3月15日号