笑顔の安倍首相 (c)朝日新聞社 @@写禁
笑顔の安倍首相 (c)朝日新聞社 @@写禁

 2月22日、安倍晋三首相(58)がオバマ米大統領と日米首脳会談を行った後、TPP(環太平洋経済連携協定)について「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないとの認識に立った」と表明すると、国内、特に自民党の様子は一変した。

 慎重派の牙城である議員連盟「TPP参加の即時撤回を求める会」は、首相の帰国後の26日に会合を開いたが、参加者は80人。訪米前は230人以上が名前を連ね、気勢を上げていたのがウソのような静けさだ。

「みんな冷たいよな(苦笑)。農林族の中心メンバーは、相変わらず机をバンバンたたいて威勢がよかったけど、後ろのほうに座った議員はスマホをいじったり、寝ていたり」(出席した議員)

 慎重派と推進派が混在する自民党の外交・経済連携調査会は27日に「守るべき国益」を決議。【1】コメ、麦、牛肉、乳製品、砂糖などを関税撤廃対象から除外【2】自動車の安全基準を維持――など6項目を列挙した。

「逆にこれで安倍さんは国会で追求されても答弁しやすくなったね。『六つを守る』と言えばいいから」(前出の盟友)

 首相側に抜かりはない。「選挙区向けのアリバイ作りで反対の態度をとっている議員も多い。それもわかった上で、安倍さんは彼らに丁寧に接している。農林族議員と国会内ですれ違うときも、しっかりと頭を下げているしね」(側近議員)

 政権支持率が高止まりしている以上、農林族が束になっても、けんかにならない。さらに自尊心をくすぐることで、「毒気」さえ抜いてしまっているのだ。

週刊朝日 2013年3月15日号