いまや昼間の映画館はシニア割引の高齢者が多い (c)朝日新聞社 @@写禁
いまや昼間の映画館はシニア割引の高齢者が多い (c)朝日新聞社 @@写禁

 安倍晋三首相の推し進める経済政策「アベノミクス」に対して、世間の期待は高いようだが、ニュースキャスターの辛坊治郎氏は警鐘を鳴らす。

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 今年1月から現役世代の給料袋はまた少し軽くなった。年々、厚生年金や健康保険料などの乗率が高くなり、給料の総額が同じでも手取り額は急速に目減りしているのだ。さらに、東日本大震災の復興費用は、今後25年にわたる所得税の定率増税を柱に賄われることが決まっている。多くの年金生活者は所得税の課税対象になっていないのが現実で、これはつまるところ、東北復興を現役世代の負担でのみ行うことを意味する。これを決めたのは民主党政権だが、安倍政権が決めた巨額の補正予算案の最大の財源は建設国債だ。これまた、60年先の子孫に現在の景気対策と復興費をツケとして回すことを意味する。

 そして極めつけは、70歳から74歳までの医療費自己負担2割の凍結だ。

 なぜこんなことがまかり通るのか。圧倒的なボリュームゾーンである高齢者世代を敵に回すと、「選挙という商売」に差し支えると考える志の低い政治家が、「今の利益」のために若者から将来を奪うのだ。

 昨年末の選挙時点で50歳以上は有権者の実に54%を占めている。日本の高齢者が「自分たちの利益」のみを考えて、その巨大な政治的力を行使したら、間違いなく日本は終わる。
 
(週刊朝日2013年3月8日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)

週刊朝日 2013年3月8日号