NHK大河ドラマ「八重の桜」の舞台、会津。山本八重も愛(め)でた会津の桜は、時代を超えて人々を魅了する。写真家の堀内孝氏が会津の名桜をめぐった日を振り返る。

*  *  *

 会津の桜がずっと気になっていた。数年前から福島県の桜を訪ね始め、今度こそは会津の桜を撮りに行こうと思っていた矢先に東日本大震災が起きた。それからl年が過ぎた昨年4月。私はようやく会津に向かった。

 まず訪ねたのは白虎隊自刃の地、飯盛山の近くにある「石部桜」だ。会津五桜のひとつに数えられ、樹齢は約600年。枝張り19メートルのエドヒガンザクラは、朝日を受け、真っ白な花びらを神々しく輝かせていた。風評被害で観光客が減っていると聞いていたが、県内のみならず、県外からも多くの人が訪れていた。

 千本もの桜が城内に咲く鶴ヶ城に立ち寄り、次は会津美里町へ向かった。移動中の車からは、原発事故で楢葉町から避難してきた人たちの住む仮設住宅が見えた。会津若松市を中心とする一帯には、今なお多くの原発被害者が避難生活を余儀なくされているという。そこに咲く桜は、一筋の希望となっているのかもしれない。

週刊朝日 2013年3月8日号