除染作業があまり進んでいない福島第一原発近郊の農地。一部地域では、休耕地を大規模太陽光発電施設に転用する計画があったが、認められなかったという。ジャーナリストの辛坊治郎氏は農林水産省の「農地法」について言及した。

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 都会に住んでいて突然故郷の農地を相続した人が、農地を売ることもできず、後継者も見つけられず、農地の優遇税制を頼りに土地の所有を続けても、やがて田畑は森に還る。農業に将来性を見出し、若い労働力を確保して新規参入を考える企業は決して少なくないが、ようやく4年前、これらの企業に認められたのは、規模拡大の難しい細切れの休耕地を借り上げる権利だけだった。さらに、農地に養鶏場や大規模野菜工場を造るだけでも、住宅を建てるのと同じ農地転用許可が求められるのが現実だ。

 農水省も農業関係団体も、農業の「今」を守るために、徹底的に規制緩和に抵抗しているように見える。しかし、果たして「今」を守ることで、「将来」を手に入れることができるだろうか。「今」を守るために、みすみす豊かな未来を手放しているのかもしれないという想像力が必要ではないか。

週刊朝日 2013年3月1日号