国際オリンピック委員会(IOC)は2月12日、スイス・ローザンヌで開いた理事会で、2020年夏の五輪で実施する25の中核競技を決めたが、そこにレスリングの名前はなかった。一方、除外の“本命”とされた近代5種とテコンドーはIOC理事会を前に、がっちりと“寝技”をしかけていた。

 近代5種の国際競技団体の副会長はIOC理事のサマランチ・ジュニア氏。21年もIOCに君臨した父・サラマンチ前会長の威光も消えない。テコンドーは本場韓国の朴槿惠(パククネ)・次期大統領が、訪韓したジャック・ロゲIOC会長に存続を訴えた。また専属のロビイストを国際会議へ派遣して働きかけたという。

 投票権のなかったロゲ会長を含め、9人が欧州出身者だった影響も囁(ささや)かれる。欧州ではレスリング人気が伸び悩み、レスリング出身の理事は一人もいない。

 スポーツライターの玉木正之さんは、こう語る。

「レスリングは近代五輪の第1回から実施されてきましたが、今回は『伝統vs.商売』の戦いに負けましたね。近代5種とテコンドーが残されたのは利権ですよ。これらの競技を応援しているIOC委員の利権争いです」

週刊朝日 2013年3月1日号