役者には2通りある。どんな役でも自分の色に染めるタイプと、様々な色に染まるタイプ。窪田正孝は、間違いなく後者だろう。

 母親が持ってきてくれた雑誌に載っていたオーディションを受けたのが高校1年のとき。ダンスユニットで活動した後、役者に転向した。

 19歳のときに、ドラマ「ケータイ捜査官7」の主役の座をオーディションで射止めた。1年間続いたそのドラマの撮影現場で、スタッフや共演者から多くの刺激を受けた。何よりも三池崇史監督との出会いが大きかった。

「サングラスの向こう側から黒いきれいな瞳で全部見透かされているような気がして。現場で自分の力をすごく引き出してもらったように思います。そこで自然体というか、演技は作るものですけど、作らない感じというか……。そんな不思議な感覚を覚えました」

 自分が成長し、芝居の面白さをより感じることができたこの現場が、役者としての原点だという。

 現場では台本は見ない。家では台本から目を離さない。

「この人は普段何をしているのか、どんな動作か、癖はあるのか、という外側の形と、誰のことが好きで何が嫌いなのか、という内側の気持ちの両方を出せていけたらなって思います」

 まだ24歳。これからどんな色を見せてくれるのだろう。

週刊朝日 2013年2月22日号