今年はかなり飛散量が多い―――。そう聞くだけで鼻がムズムズしてきた人もいるだろう。日本人の6人に1人ほどが患者といわれる「花粉症」の季節がまたやってきた。

 現在、花粉症治療の中心となっているのは薬物療法だ。だが、手術療法を含め、いずれも花粉症の根治を目指した治療ではない。では、どんな根治療法があるのだろうか。

 現状では、花粉症の原因となる物質を体内に注入して体を花粉に慣らしていく「アレルゲン免疫療法」が唯一の治療法となる。数年前までは皮下注射によるアレルゲン免疫療法が主流だったが、高い効果が得られる半面、注射による痛みや副作用など患者に与える負担が大きく、広く普及していない状況だという。

 そこで、最近、注目され始めているのが、新しいアレルゲン免疫療法といわれる「舌下免疫療法」だ。これは、舌の下に花粉エキスをしみこませたパンを置き、約2分間放置して扁桃から花粉エキスを体に浸透させる治療法だ。

「1日1回から徐々に間隔を広げていき、最終的に2週間に1回の投与を2年間続けます。皮下注射だと毎回通院する必要がありますが、舌下免疫療法なら自宅でもできるため通院は1カ月に1回ですみます」(花粉症治療の第一人者として知られる、日本医科大学耳鼻咽喉科の大久保公裕教授)

 その効果は皮下注射と比べて遜色ない。

 2006~09年に東京都が約140人の花粉症患者を対象に行った臨床研究では、約7割の患者の症状が軽減し、そのうち約3割が根治した。重篤な副作用は一例もなかったという。

週刊朝日 2013年2月22日号