週刊朝日でコラムを執筆している河原雅彦さんは、俳優、演出家、脚本家という多彩な顔を持つ。その中でも特に脚本家の仕事については「超過酷」だといい、その実態を次のように明かす。

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 さて、今回は『作家』について。

 当方、舞台演出や俳優をやらせていただいている傍ら、僭越ながらこぢんまりと作家業に従事することもあるのですが、これがもう実にしんどい。

 そりゃ自分がイチから書いたものが作品になるわけですから、無事に仕事を終えられた時の達成感はそりゃもう格別! 特に映画やドラマの場合、自分が書いた台詞を素敵な役者さん達がそのまましゃべってくれたり、なにせ多くの方たちの目に触れるのです。やりがいもあれば、かなりまとまったお金(ギャラ)にもなる。

 でもね、そこに至るまでの過程といったら“超過酷”の一言に尽きるわけ。

 常に脳みそパンパンだし、食欲もなくなるし、あるいは食ってばっかで動かないから太るけど、どっちみち顔だけやつれるし、睡眠不足にも当然なるしで、『不健康ここに極まれり』な状態に陥るのです、心身ともに。

 ま、それでもスイスイ書けてるうちは楽しいけどね。でも、プロデューサーから「タレントの○○さんが別仕事でドラマの現場を抜けなきゃいけなくなったので、○○さんの役、どっかで殺して(もしくは“旅に出して”)」とか、そんなストーリーじゃ全然ないのに、「観た人が喜ぶからLOVEな展開をどうにか入れ込んで」とか、「知らんがな!!!」と叫びたくなる注文が後から後からついてくることもしばしば……。これね、ちょっとした拷問ですよ。ドM気質がなかったら、やってられませんよ。俺、別にドMじゃねーけど。

週刊朝日 2013年2月15日号