投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表・藤巻健史氏は、膨大な借金の解消に道筋をつけない安倍政権の経済政策をみて、やはり日本の財政破綻は避けられないとみる。

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 私が財政状況に悲観的なのは、ただでさえ限界だと思っているのに、借金額が、今でも半端でない勢いで増え続けているからだ。2020年度までにプライマリーバランス(PB。税収など本来の収入と、政策実行にかかる支出の差し引き)をトントンにさせるというが、前回書いた通りPBとは国債の元本返済や金利支払いを除いた金額だ。トントンになっても、支払金利の分だけ、累積赤字は毎年増加を続けるのだ。景気がよくなり金利が上がったら、支払金利は考えただけでもうんざりするほどの巨額だ。それがゆえに累積赤字はさらに急増する。

「財政破綻は大丈夫だ」と言う論者も、「いまは破綻しない」と言うだけで、累積赤字を減らす解決策をだれも見いだせていない。累積赤字は日ごとに急速にたまっているのに、だ。今年度の補正予算案でも再度、大型財政出動である。さらには、日銀に2%のインフレターゲット導入を要求したのに、来年度予算案では金利支払いの基本となる想定金利を2%から1.8%に下げるという。子供だましで財政規律を保っているふりをしているのだ。インフレなのに金利が下がるか!

 私は、この莫大な累積赤字の金額を見るたびに、円を売って社会のリセットに備えざるを得ないと思うのだ。財政破綻もしくはハイパーインフレになった国の通貨は暴落だからだ。

週刊朝日 2013年2月15日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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