ボーイング社は787型機を出荷停止に (c)朝日新聞社 @@写禁
ボーイング社は787型機を出荷停止に (c)朝日新聞社 @@写禁

 まさかのバッテリートラブルにより、世界中で運航停止の事態となったボーイング787型機「ドリームライナー」。厳しいコスト競争にさらされる航空業界で、全日空が次世代の柱と位置づけた夢の最新鋭機に、いったい何が起きたのか。

 787型機は主翼を三菱重工、前部胴体を川崎重工など、機体部品の35%を日本メーカーが担い、「準国産機」とも呼ばれる。東レが開発した炭素繊維複合材を機体に使うなど、大幅な軽量化で燃費を2割も改善。トイレも、わが国が誇る「ウォシュレット」である。今回、運輸安全委員会が米国家運輸安全委員会と共同で調査しているのは、その787型機が搭載する「リチウムイオン電池式」のバッテリー。これも、製造は日本のGSユアサだ。

 この電池、高性能の一方で危険性が指摘されてきたのも、また事実。国内では2006~07年ごろ、携帯電話やパソコン用で異常発熱が起き、大規模な回収・交換が起きた。昨年1月には、米ゼネラル・モーターズが最新電気自動車「シボレー・ボルト」の自主回収を発表したが、韓国製のリチウムイオン電池に発火の恐れがあるためだった。

 福井大の荻原隆教授(電気化学)が解説する。「内部に不純物が混入すると過放電や過充電を起こして過熱や発火につながる、非常にデリケートな製品。一度過熱すると毒性のある煙が大量に出て、発火した場合は火力も非常に強い」。

 バッテリーには安全装置が必ず取り付けられているが、それでも不具合は起きる。今回も、バッテリーの容器内部全体が炭化しており、何らかの原因で過充電となり、過熱した可能性が指摘されている。

「それだけに、実はB787が開発されていた07年当時、米連邦航空局ですでにその危険性が議論されていたのです」と話すのは、国内大手航空会社で技術や安全分野を長く担当した航空安全コンサルタントの佐久間秀武氏である。

 同局は「(異常発熱によって)爆発性や有毒性のあるガスが機内に入ってこないような対策が必要だ」とする米国パイロット協会の指摘を受け、「導入に当たっては、温度や圧力の異常上昇、腐食性の液体やガスが出ないようにし、過充電や過放電が起きないようなシステムや警報装置を付けること」をボーイング社に通知していたのだ。

週刊朝日 2013年2月1日号