大阪にある高校のバスケ部の男子生徒が体罰を受け、自殺した問題が大きな波紋を呼んでいる。これに対し作家の室井佑月氏は、男子生徒が体罰をうけていた当時、現場にいたという2人の講師についても触れ、次のように意見を述べる。

*  *  *

 自殺前日、顧問が男子生徒を殴りまくっていた場面に、同じ学校の講師が2人もいたらしい。

 この2人の講師は、男子生徒が殴られるのを、ただ見ていただけ。この2人の講師も、かなり危ない人間だよなぁ。普通、子供が大人に殴られまくっている場面に遭遇したら、その場にかけつけてそれを止めるだろう。

 まして、知っている子供が、知っている大人に殴られているのだ。間に入っていかないか? 問題となったこの学校では、普通の常識が忘れ去られていた。

 自殺した男子生徒が殴られるのを見ていた生徒もいたらしいが、この子たちも被害者だ。おかしな教師たちの、おかしな洗脳によって、友達が殴られまくる場面に遭遇しても、どうにも反応できなくなってしまった。

 きっと後から、「あの時、こうしておけば」 そう考え、一生の心の傷になるだろう。

 子供を教えている教師に常識を求めなきゃならないなんて、すごい世の中になったもんだ。

週刊朝日 2013年2月1日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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