フィリピン・マニラ近郊で昨年末、邦人男性が射殺された。逮捕されたのは殺害を依頼したというフィリピン人妻だが、妻は夫の暴力に苦しめられていたと主張。しかし、被害者の元同僚は反論する。

 殺された新倉英雄さん(61)は神奈川県内の中学を卒業後、国内の大手自動車メーカーに二十数年間、勤めた。退職後は、電鉄系の警備会社に12~13年勤めていたが、5年ほど前にこれも退職。それからは定職につかずぶらぶらしていたという。妻のメリンダ・ソリア容疑者(46)と結婚するまで独身だった。

 30年来の付き合いがある元同僚はこう話した。「彼は工場で部品を作る機械工でした。フィリピンは楽しくて、いいところだとずいぶん前から言っていた。現地女性と結婚して娘もいるので、向こうで永住すると言ってました。彼は彼女にはまって、ずっと一筋。彼女を愛してました。向こうで暮らすために一生懸命、節約しておカネをためてましたよ」

 メリンダ容疑者が主張する「暴力」については、「それはウソだと思います。暴力をふるうような人ではないですよ。優しくて、まじめ。フィリピンは物価も安くて、気候も暖かくて天国のようなところだと言っていましたが、本当に天国へ行ってしまった……」

 新倉さんは5人兄弟の末っ子。15歳上の長男(76)にも話を聞いた。「私はフィリピンへ行ったことがありません。だから、弟の妻にも会ったことがない。弟は『フィリピンでは月3万円から5万円あれば生活できる』と言ってました。『移住したい』と言うから、『物騒な国だからやめとけ。カネを全部取られて、ほっぽり出されるのがおちだ』と反対したのよ。それが私に黙って移住して、後になって『申し訳ない。世話になった』という手紙が来たんです」。

週刊朝日 2013年1月25日号