タクシーは、景気の影響が顕著に現れる業界の一つだ。デフレ不況で年々厳しくなっているなか、「現場の感覚でいうと、昨年夏からさらに悪化したように思います」と語るのは、杉並交通のカリスマタクシー運転手で、作家志茂田景樹氏の次男である下田大気氏だ。

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 昨年末の忘年会シーズンも、ほとんど盛り上がりませんでした。一昨年まではシーズンの平日夜なら、常にお客様が乗車しているような状況でしたが、昨年は金曜日すらさほど忙しくなかった。飲みに行っても、皆さん電車がある時間に帰られるんです。乗車しても最寄りの駅までというお客様が多かったですね。

 一方で、東京で言えば、歌舞伎町などの飲み屋街や渋谷などの若者の街は、比較的景気に左右されにくい。水商売の方は、どうしても帰りはタクシーが多くなるし、若い人も終電を気にせず飲んだりしますからね。

 とはいっても昔とは雲泥の差です。キャバクラ嬢のお客様は、「前よりアフターが少なくなった。お客さんも昔みたいに羽振りのいい飲み方はしない」とこぼしていました。私も、長距離ではなく、2千円程度のお客様に何回もご乗車いただくことで稼いでいます。

週刊朝日 2013年1月25日号