1月5日、東京・築地市場の初競りで、222キロの本マグロを史上最高値となる1億5540万円で競り落とした喜代村社長の木村清氏。「昨年が5649万円だったので、ちょっと高かったかな」と本音ものぞかせながら、すし業界から見る今年の日本経済について語ってくれた。

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 ここ数年の外食産業の景気は非常に厳しいものがありました。少子高齢化もあって、外食産業の市場規模は縮小する一方です。激しい価格競争の中で、伸びる企業と凋落する企業の「二極化」が顕著になってきているように思います。

 実は今年、すし業界にとってプラス材料があります。昨年から中国船や台湾船などによるマグロの漁獲量が増えてきている影響で、海外からマグロをより安く輸入することができるようになったんです。現状でも、メバチマグロやキハダマグロは以前の3分の2ぐらいの価格になってきています。

 でも、あまりにも安くなることは漁師さんにとってはいいことではありません。安倍政権に期待することは、そんな苦しい人たちのために経済政策で需要を喚起してほしい。いままでの日本経済は「枯れた井戸」のような状態でした。そこに経済政策で需要という呼び水を入れてほしいのです。

 実際、安倍政権の発足で株価は上がり、公共事業への期待感も高まっています。為替も円安に振れており、一度は日本の景気も上向くはずです。ただし、それがいつまで続くかはわからない。呼び水があるうちに、われわれ企業も打てる手を打っていかないと、一過性で終わってしまうでしょう。

週刊朝日 2013年1月25日号