親が亡くなってから問題になる場合もある遺産相続。もめやすいのは実は「財産は自宅だけ」という人らしい。

 2011年分の国税庁のデータによれば、全相続財産のうち不動産(土地、家屋等)が52%を占める。多額の預貯金はなくても、自宅を所有している人は多い。そして、何よりも問題なのは、自宅は分けることができないということだ。三菱UFJ信託銀行トラストファイナンシャルプランナーの灰谷健司さんは語る。

「主な財産が自宅だけという人はとても多いのですが、実はこうした人たちは非常にもめやすい。資産家が自宅以外の不動産をいくつも持っている場合なら、分けようもありますが、一つしかない不動産の処理は大きな問題になります」

 相続が起きたときに不動産を分ける方法には4つある。(1)現物分割(2)換価分割(3)共有(4)代償分割だ。このうち、自宅の場合に使える可能性があるのは(2)~(4)。以下、それぞれについて解説していこう。

(2)の換価分割は、不動産を売って売却代金を分割する方法だ。これができれば平等に分けられるのでもめないが、誰かが暮らしていれば使うことができない。

(3)の共有は、不動産を相続人の共同名義にすることだが、これは争いのタネになりがちだ。きょうだいが存命の間は話し合いができるが、たとえば兄が亡くなり、兄の配偶者や子が相続したりと、疎遠な関係の人が多くかかわると、話し合いもままならなくなる。

 そこで、注目したいのが(4)の代償分割。これは、自宅に住んで不動産をもらった相続人が、その代わりにほかの相続人にある程度の資産を渡す方法だ。

 灰谷さんが次のように解説する。「この方法で相続を成功させるポイントは『割り切り』です。不動産の評価額をめぐってもめることが多いのですが、絶対の正解などないということを肝に銘じ、お互いが折り合える金額で、矛を収めましょう」。

週刊朝日 2013年1月18日号