タナダユキ1975年、福岡県生まれ。初監督作品「モル」(2001年)の受賞後、ドキュメンタリー映画「タカダワタル的」(04年)の監督に抜擢される。08年には「百万円と苦虫女」で日本映画監督協会新人賞をとる。今年は「四十九日のレシピ」が公開予定(撮影/写真部・遠崎智宏)
タナダユキ
1975年、福岡県生まれ。初監督作品「モル」(2001年)の受賞後、ドキュメンタリー映画「タカダワタル的」(04年)の監督に抜擢される。08年には「百万円と苦虫女」で日本映画監督協会新人賞をとる。今年は「四十九日のレシピ」が公開予定(撮影/写真部・遠崎智宏)

 まだ映画の技術も脚本の書き方も知らない20代半ば、監督・脚本・主演で初めて作った作品が自主映画の登竜門「ぴあフィルムフェスティバル」のグランプリを受賞。幸運なデビューを果たしたタナダユキは、それからわずか10年余り、今やTSUTAYAで専用コーナーが作られるほどの監督となった。蒼井優主演の「百万円と苦虫女」も彼女の作品だ。

「監督の仕事ってなんだろう?と考えると、いまだによくわからないです。いつも周りに助けられてますし。ただ、どんな状況であろうと、常に何かを選ばなければいけない。お芝居はもちろん、衣装や小道具まで。ほんと細かいとこまで聞かれますから。そして、選んだ以上は、すべて自分で責任を取らなければいけない」

 撮影現場では、数十人の人間が朝から晩まで共同作業をする。濃密な人間関係が1カ月ほど続くストレスは半端ではない。撮り終えた後には、もう誰にも会いたくなくなるほど。

「現場はしんどいことばかり。でも、見ていて、ぐーっと自分の心が持っていかれるような、思わず一歩前に出たくなるくらい良い演技が撮れることがある。どんなに現場の雰囲気が悪かろうと、そのときに報われたなって思えます」

 今年の目標は、「締め切りが2年半前の小説を刊行すること(笑い)」。そちらも楽しみだ。

週刊朝日 2013年1月18日号