IT技術が目覚ましく発展し、今まで必要とされてきた「技能」が陳腐化。働く前に大学で学んだ知識が40年50年通用するかと言えば、厳しい現実がある。東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏(49)は、そんな世の中の激変に対応するために「40歳定年制」を提案する。

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 私が提案したいのが、働く人たちの「セカンドキャリア」を充実させる制度です。具体的には、40歳でまず定年を迎え、退職金をもらいます。そのお金も使って、企業の外で勉強しながら新しい仕事、「セカンドキャリア」を見つける。そんなシステムを築ければいいと思っています。

 セカンドキャリアを成功させるには、その時代に必要とされる新たなスキルを身につけることが必要です。雇い主である企業が「わが社はこんなスキルを持つ人材がほしい」と声をあげます。そうした声に応じて、セカンドキャリアの対象者に教育の場を提供し、特定のスキルをつけられるようにするのです。約20年の経験を積んだ社会人が、さらに能力を開発することになります。

 その教育の場は、国がある程度予算をつけて整備していかなくてはいけません。少子化で学生が少なくなっている地方の大学などを利用してもいいでしょう。

 いつ会社がなくなるかわかりませんし、いつどの産業が衰退するかわからない。そのような将来は、こうした形のキャリアアップ、セカンドキャリアづくりが珍しくない社会でなくてはならないのです。

 セカンドキャリア制度が実現すれば、働きがいのある世の中になります。そのとき、日本は強くなると思いますよ。

週刊朝日 2013年1月18日号