マイコプラズマ感染症の一つ、マイコプラズマ肺炎が増え続けている。2012年の患者数は過去最高を記録した。マイコプラズマ感染症は「肺炎マイコプラズマ」という菌(以下、マイコプラズマ菌)による呼吸器感染症だ。一般に症状は軽く、放置しても1カ月程度で自然治癒する。肺炎にまで進行する人は少ないが、肺炎の原因菌としては肺炎球菌の次に多い。

 大人で最も問題なのは、重症化する人が多いことだ。なかでも、肺に近い細い気管支がつぶれ、肺に空気がいかなくなる「細気管支炎」がよく見られる。

 札幌市に住む小学校教師の川村美絵さん(仮名・34歳)の呼吸障害も細気管支炎の症状だった。CT(コンピューター断層撮影)の画像では空気のある部分は黒く写るため、胸のCT画像を撮ると、息を吸ったときと吐いたときで色の濃さが異なるのが普通だ。しかし、医大前南4条内科院長の田中裕士(ひろし)医師が撮った川村さんのCT画像は、吸ったときと吐いたときの見分けがつかなかった。細気管支がつぶれ、空気が十分に肺まで達していなかったのだ。呼吸機能検査でも機能の低下が認められた。

 こうした重症例にはステロイド薬が効果的だ。田中医師は4週間、吸入のステロイド薬を投与。最初の1週間は内服薬も併用した。1カ月後、川村さんの症状は消え、その1カ月後には呼吸機能も完全に戻った。

「重症化しやすいのは、川村さんのような、30代ぐらいでからだが丈夫な人。そういう人は免疫システムも強力だからです。マイコプラズマ菌は免疫系を刺激するため、過剰反応が起こりやすいのです」(田中医師)

週刊朝日 2013年1月18日号