一昨年、ニューヨーク・タイムズ紙に、米デューク大のキャシー・デイビッドソン教授のこんなインタビューが掲載され、話題になった。「2011年にアメリカの小学校に入学した子どもが社会人となるころ、その65%が今は存在しない職に就く」。

 東京大学大学院情報学環准教授の山内祐平氏(45)は、いま日本にある「ソーシャルメディア・コーディネーター」や「情報セキュリティマネージャー」といった職業は、10年前には存在しなかったことを指摘したうえで、「同様に2030年には、現時点で想像もしないような職業が次々と生まれているはずです」と話す。一つの職に就き続けるということがなくなり、5年おき、10年おきに新しく変わっていくとも話すが、そのような時代に求められる能力は何なのであろう。山内准教授に聞いた。

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 それは「21世紀型スキル」と呼ばれる、どの職業にも生かせるような高い次元の一般的能力です。例を挙げるなら、「批判的思考力」「創造性」「コミュニケーション」「情報リテラシー」といったものです。

 現在でもすでに、高等教育を中心にオンラインで無料の授業が行われています。海外で行われている講義を一方的に流すだけではなく、たとえば外国の学生と日本の学生が相互に学び合うことができます。修了証も出します。いわば国境を超えた教育の再編です。今後こうしたスタイルがますます進歩するはずです。

 世界の大学は二極化されることになるでしょう。

 一つは、世界レベルで新しい知を生み出していく大学です。そうした大学では、大学同士の単位互換が活発化します。オンライン学習を利用して、この授業はスタンフォード大、これはハーバード大、これは東大で、というようにそれぞれ履修する。各大学は、よりいっそう得意分野を強めていくでしょうね。

 もう一つは、ローカルで働く人々を育てる大学です。こうした大学では、教養主義よりも、実際的な専門性の習得を優先させることになるでしょう。その際、主流になるとみられるのが「反転授業」と呼ばれるスタイルです。基礎的な知識は前もってネット上で学んでおき、グループワークや対面授業で、専門性や技能に近い学習をするのです。

 先が見えにくい嵐のような世の中ですから、変化への対応力を身につけることが求められるのです。

週刊朝日 2013年1月18日号