小津安二郎監督の「東京物語」へのオマージュ作品といわれる映画「東京家族」(山田洋次監督)がまもなく公開される。主演の橋爪功が作家・林真理子との対談で、共演者の蒼井優をこう評した。
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林:最後、蒼井優ちゃんが島を離れるときのシーン、「東京物語」では笠智衆さんが原節子さんに「あんたはいい人じゃよ」って言うと、原さんは「とんでもない。私、ずるいんです!」ってはっきりとした口調で言いますよね。
山田監督はこれをどう対処するのかなと思ったら、蒼井優ちゃんに「私、無視されてるのかしら」「来るんじゃなかった」なんて言わせたから、ああ、こうやったのか、非常に現代的だなと思いました。
橋爪:なるほどね。蒼井優が恋人役の妻夫木聡に「自分で(お父さんに)言いなさい。私、いやよ」って言うシーンも、なかなか上手だなと思いましたね。
林:蒼井優ちゃんって、すばらしいですね。
橋爪:ふだんは本当にふつうなんですよ。映るとなんであんなによく見えちゃうんでしょうね。(笑)
林;可愛いですよ。
橋爪:いざ演技となると、本当に可愛いのよ。一緒にやっていても見とれちゃうくらい。
林:天使みたいに可愛いですよね。
橋爪:ふだんはぜんぜん天使みたいじゃなくて、さばさばしてる感じなのにね(笑)。たとえば、明治の女をやることになって、着物を着て演技をすると本当に明治の女に見えちゃうから、すごいんですけど。
林:いろんな役ができるんですね。
橋爪:相当ウデが確かじゃないと、ああいう切り替えはできないと思うんです。センスがいいというのか頭がいいというのか、まあびっくりしましたね。
※週刊朝日 2013年1月4・11日号