解決の見通しがつかない原発問題。日本の電力供給は今後どうするべきなのか? 脱原発は可能なのか? ニュースキャスターの辛坊治郎氏はこう提言する。

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 択捉(えとろふ)島一島分の面積に太陽光パネルを敷き詰めれば、原発45基分の総電力が得られ、晴れた夏の日中なら、その最大出力は原発450基分にもなる。

 しかし、これで日本の電力問題が一気に解決! とは残念ながらならない。理由はサルでもわかる。それは、今のところ「電気を貯めておけないから」だ。「電気を貯める」技術が向上すれば、原発や輸入化石燃料に頼らずにエネルギーを自給自足できる可能性が、この国には確かに存在する。

 すでに行われている「蓄電」方法の中で、最大の出力を誇るのが「揚水」だ。今までこれは、24時間休みなく最大出力を発電し続ける原子力発電の夜間の余剰電力を貯めるために使われてきたが、発想を変えて日中の太陽光発電の余剰電力で揚水し、夜間や雨天時に発電することを考えてはどうか。現在、日本で利用可能な水のうち、水力発電に使われているのは約3分の1と言われている。これは、農業用水には農水省、河川管理のためには国交省等と、日本の水には中央官庁のタグが付けられているからだ。

 かくして「農業用」あるいは「治水用」に貯められた水は、田畑や河川を潤し、海に帰る。その途中で落差を利用してエネルギーを取り出しても、別に農業の妨げになるわけでもないのに、官庁の厚い壁が、その利用を妨げているのだ。現在、日本に存在するダムの総数は約3千、そのうち発電に使われているのはおよそ600、これはもったいないだろう。これらのダムに積極的に揚水発電装置を付けることで、相当程度、「蓄電」できるはずだ。

(週刊朝日2012年12月28日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)

週刊朝日 2012年12月28日号