近年、中国の資本主義化が急速に進んでいる。投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表である藤巻健史氏は、ハワイで参加したツアーをきっかけに、資本主義化する中国に後れをとらないためにも、日本には「自己責任」のもと「小さな政府」を目指してほしいと指摘する。

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 11月に出かけたハワイで、四輪駆動車での荒れ地ツアーに参加した。

「けがやその他の責任を主催者が負わない」という誓約書にサインをした上で、思いっきり悪路をぶっ飛ばすのだ。時速32マイル(約50キロ)まで出るそうだが、アクセルを踏み込まないと、前の車に置いてきぼりを食う。砂塵が舞い上がり前の車のテールランプさえ見えない。

 ゴーグルとバンダナは必需品である。それにもかかわらず、ホテルに戻り、シャワーを浴びたら、鼻の中、耳の中から赤砂がどっさり出てきた。まさに「ワイルドだろぉ」だ。よく事故が起きないと思う。

 米国は「自己責任」の国なのだ。「自己責任」という誓約書にサインをした以上、かなり危ないことまでやらせてくれるのだ。

 これが日本なら、主催者は事故を怖がり、誘導車が時速20キロくらいで前を抑えてしまい、お子ちゃまツアーにしかならないだろう。建国200年以上たった米国に新興国のような勢いやチャレンジ精神を感じるのは、「自己責任」のもとに、なんでもやらせてくれるからだと思う。「これはダメ、あれはダメ」で縮こまってしまう日本とは大違いだ。

 経済も同じである。社会保障の支出を含め保護者である政府を小さくし、「自己責任」で国民の自立を図っていかないと、「社会主義国家・日本」は、中国をはじめとする「資本主義国家群」にますます後れをとってしまうことだろう。

 新しい政権には、ぜひ、「小さな政府」への道をたどっていただきたいとつくづく思う。

週刊朝日 2012年12月28日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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