報道陣の求めに応じ、少しだけ笑顔を見せた安倍次期首相 (c)朝日新聞社 @@写禁
報道陣の求めに応じ、少しだけ笑顔を見せた安倍次期首相 (c)朝日新聞社 @@写禁

 師走の衆院選は、自民党が294議席で圧勝し、3年3カ月ぶりに政権を奪回した。とはいえ、民主党分裂や第三極乱立に助けられた結果でもあり、国民の支持が盤石とは言い難い。来夏には安倍晋三次期首相(58)にとって「鬼門」の参院選が待ち構えている。

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 ひたすら「笑みなき」政権交代だった。

 12月16日、自民党本部。午後10時過ぎから民放5社とNHKの選挙特番に計約40分間、立て続けに出演した安倍氏は、勝因を聞かれると、表情を崩さず、こう繰り返した。

「自民党への信頼が戻ってきたというよりも、この3年間の民主党の混乱へのノーだった」
「かつての自民党と変わったのかどうか、国民の厳しいチェックがある。期待に応えられるかどうか大きな責任がある」

 安倍氏の頭を占めているのは来年7月の参院選だ。自民党が3年前に政権から陥落したきっかけは、安倍自民党が2007年参院選で大敗したことだった。その「鬼門」の参院選が、再び安倍リバイバル政権の命運を握ることになる。

 参院選が決勝戦とするなら、今回の衆院選は準決勝にあたる。自民党は294議席、議席占有率は61.3%と圧勝したが、ある党幹部は選挙期間中ずっと戸惑っていた。

「最近の衆院選のうち、05年は突風、09年は熱風が吹いたが、今回は微風すらなかった。それなのにこの膨大な議席数。日本列島の一体どこに政治熱があるのかわからない」

 それが証拠に、比例区の自民票は1662万票(27.6%)。政権を手放した09年の1881万票(26.7%)より票数は減っているのだ。安倍氏が繰り返したとおり、自民党への信頼が大きく回復したわけではない。

週刊朝日 2012年12月28日号