「自民、単独過半数の勢い」(朝日新聞)、「自民過半数超す勢い」(読売新聞)、「自公、政権奪還の公算」(産経新聞)……。

 12月6日付の新聞各紙1面は、いずれも衆院選の情勢調査を報じたものだった。そろって自民党の圧勝。270議席前後を獲得し、公明党と合わせて300議席にも上るという。あまりに一方的な内容に、こういぶかしむ声まである。

「自民党への風なんて全然感じない。それなのにこんな時期にこんな数字を出すなんて、選挙妨害だよ。マスコミによる安倍つぶしの一環か?」(自民党幹部)

 とはいえ、この“圧勝予測”について、自民党関係者がこう解説する。「実は、うちが民主党と第三極支持の合計数値に負けている選挙区は結構ある。本来は民主党に行くはずの票が、維新や未来など乱立した第三極候補に流れ、勝手に食い合ってくれている。うちがやっているのは民主党批判だけ。まさに“漁夫の利”ですよ」。

 そんなウハウハの自民党にとって最大の懸念材料は、「国防軍」や「改憲」などタカ派路線を突っ走る安倍晋三総裁と公明党のぎくしゃくぶりだった。

 その安倍氏、自民圧勝の調査結果が報じられた同日、関西地方で遊説した。公明党の北側一雄元国交相(59)の大阪16区にも応援に入ったが、「しっかり金融緩和をしてデフレを脱却します」「公共投資をしても無駄遣いはしません」などと無難な演説に終始。タカ派路線は完全に封印し、一時の歯切れ良い発言も消えていた。公明党関係者も「これなら大丈夫」と、お墨付きを与える安定感である。

 自民党のある派閥領袖(りょうしゅう)が内実を明かす。「『次の首相なんだから、発言は慎重になったほうがいい』と、本人に話しました。鳩山由紀夫元首相が普天間基地の移設について『最低でも県外』と口にし、政権の足を引っ張った例もある。このままいけば確実に政権に戻れるのだから、とにかく“安全運転”第一です」。

週刊朝日 2012年12月21日号