永田町では衆院解散後、野田佳彦首相(55)の、ある怪情報が流れていた。

「野田さんが『プロレス戦術』に打って出るらしい」

 意味のよくわからないこの噂の発端は、自民党安倍晋三総裁(58)との党首討論だ。11月14日、マイクの前で突然、手刀を切りながらドスを利かせた声で、「16日に解散してもいい」と宣言した、あの鬼気迫る姿が「プロレスのマイクパフォーマンスをまねた」(ベテラン議員)と評されたのだ。

 事実、野田首相は大のプロレス好きで、故ジャンボ鶴田のファンだと公言している。噂を裏付けるかのように、解散後は安倍氏に1対1の“タイマン”党首討論を要求。12月2日のスポーツ紙のインタビューでは、ジャンボの得意技に絡めて過激に敵を挑発した。

「安倍さんには伝家の宝刀バックドロップで決めに入る。最後は逆エビ固めで泡を吹かせるところまでもって行きたい。一騎打ちなら負けるつもりはない」
「石原(慎太郎)さんは暴走老人ということで、スリーパーホールドで静かに眠ってもらいたい」

 選挙では「イメージ戦略」が票を大きく動かすと言われる。「自公圧勝」の予測が報じられる窮地とあって、公示後も、プロレス流の捨て身の舌戦を挑むと期待させたが……。

「公示後の演説は、実直ないつもの野田節で、派手なパフォーマンスはありません。逆風の中、応援演説は女性票が期待できる細野豪志政調会長頼み。田中慶秋前法相(神奈川5区)、城島光力財務相(同10区)ら、苦戦が伝えられる大物には細野さんが応援に回っている」(永田町関係者)

 事実、6日の田中、城島両氏の応援演説では、「全国でひっぱりだこの細野豪志、細野豪志がまもなくやってまいります」とウグイス嬢がしつこいほどに連呼。その細野氏は舌鋒鋭く安倍氏を批判し、演説後には女性たちの握手攻めにあっていた。

週刊朝日 2012年12月21日号