「原発ゼロの社会をつくることが、事故に直面してきた私の責任であり義務だ」

 12月5日夜、京王線府中駅前で握りこぶしを振るっていたのは、東京18区の菅直人前首相(66)。お立ち台のビール箱にも、傍らの旗にも「原発ゼロ」の文字が躍り、30分間の演説はすべて原発問題。その姿はさながら“反原発の市民運動家”だった。

 しかし、そもそも原発事故への対応などが批判されて首相辞任に追い込まれた当人なわけで、当然、風当たりは強い。情勢は自民元職の土屋正忠氏(70)と接戦とみられており、地元に張り付いて“どぶ板”に徹することを余儀なくされているのである。相手側も勢いづいている。

「ずっと勝てなかったが、今度こそ、にっくき菅氏に勝つチャンス。党本部も本気で、安倍晋三総裁、石破茂幹事長、高村正彦副総裁、石原伸晃氏ら大物を次々と投入する予定です」(土屋陣営の武蔵野市議)

 敵は自民だけではない。維新、未来、共産と候補者が乱立したことで、頼みの反原発票も分裂は必至。すっかり「菅包囲網」ができあがっているのだ。いまや“独りぼっち”となった菅氏の姿は、「新党 今はひとり」を名乗って無所属で東京8区から出馬した俳優の山本太郎氏(38)の姿とどこか重なる。「反原発」でも共通するし、2人は同類か……と思ったら、どうも状況が違うらしい。山本氏を支援する「緑の党」関係者が語る。

「未来の嘉田由紀子代表も駆けつけて山本支持を表明してくれましたし、『緑の党』には俳優の中村敦夫さんのもとで選挙を経験したスタッフもいて、ノウハウもある。『第三極』政党の候補がいない8区で、反原発票を結集していきたい」

 山本サン、ここは一つ、党名を譲ってあげたらいかがでしょうか。

週刊朝日 2012年12月21日号