3年前は、学校にも高揚感があった。政権交代を遂げた民主党が、混迷していた教育に何をもたらしてくれるのか、と。確かに一瞬、新しい風が学校の中を流れたように思えたが、現場を劇的に変えるまでには至っていない。

 2009年8月30日、九州地方の小学校の教諭(31)は、翌日から始まる2学期の準備に明け暮れていた。その日は日曜で、朝一番に投票所へ行ったことは記憶している。

「選挙ではあまり取り上げられることのなかった教育政策を、民主党候補が訴えているのが新鮮でした。学校であのときくらい選挙で盛り上がったことは後にも先にもありません」

 小選挙区も、比例区も迷わず民主に入れた。とりわけ注目していたのは、安倍政権が始めた「教員免許更新制」の行方だ。現役教員に対し、10年に1度、大学などでの30時間の講習を義務づけた制度だ。受講費や交通費は自腹で、試験もあるから負担は大きい。しかも、「大学教授の話を延々と聞くだけ」「ラジオ体操のおさらいをした」などという話を聞いて、バカらしいと思っていた。

 民主党は09年のマニフェストで、(教員免許制度を抜本的に見直す)と明記した。衆院選後に始まった「事業仕分け」では、「更新制廃止を前提に検討する」と民主党議員が言った。期待が高まった。

 しかし、いつからかトーンダウン。結局、民主党は、見直しには手をつけず、新しい教員育成策に着手した。現在4年間の教員養成課程に、修士課程が加わって1~2年増え、現在2~4週間の教育実習期間を大幅に増やす。そして現役教員も、教職大学院での研修などを経て「専門免許状」を取るよう促される。

「研修は大切だとは思いますが、更新制も大学院研修も、となると、現場は大変。教育実習の長期化も、受け入れ側の学校の負担になります。民主党は、現場の意見を踏まえて考えたんでしょうか」(小学校教諭)

週刊朝日 2012年12月7日号