11月16日に衆院が解散された。作家の室井佑月氏は、解散の条件を知り、問題をすり替える野田佳彦首相を「汚い」という。

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 野田さんは、解散の条件に議員の定数削減をあげた。それは表向き、「国民だけに痛みを強いるのは堪えられないから」となっているが、問題のすり替えだ。

 かつて野田さんは「シロアリ(悪い官僚たち)退治をする」といっていた。でも、それはやめてシロアリの餌(消費税増税)を増やすことにした。

 なぜこんなすり替えをするのか、植草一秀さんはブログでこんなことをいっている。

 官僚機構の頂点にある財務省にとって、

「天下りとわたりの根絶は絶対に受け入れることはできないが、議員定数を削減することは自分たちにとって痛くもかゆくもない(中略)。議員定数が減れば、官僚主導で仕事を進めることはもっと容易になる」

 つまり、議員削減も国民のためじゃない。騙される人が少ないことを祈る。

 14日の党首討論で、あたしがわかったことは一つ。野田さんは「嘘つき」といわれていることを、思いのほか気にしておった。

 わかった、じゃあもう「嘘つき」とはいわないね。今度は「汚い」ということにする。

 野田さんは「政治生命をかけて」という言葉を簡単に使うけど、世の中がどんな風になっても政治家でいつづける自信が、彼にそういわせていたんだな。シロアリが味方だからさ。あたしらが考える意味と違っていたから「嘘つき」と誤解した。

週刊朝日 2012年12月7日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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