衆院が解散し、再び政権交代する見通しが強まっている。民主党の教育政策は、2009年の政権交代時に打ち上げた「目玉」の一つだった。優先順位に応じて3段階に分け、第1に学費負担の軽減、第2に学校教育力の向上、第3にガバナンス(統治機構)の改革を位置づけた。解散までの3年3カ月で何が進められたのか。現場の声を聞きながら、振り返ってみたい。

 第1の学費負担軽減では、高校無償化法が10年3月31日に成立した。公立高校の授業料は無料に、私立高校などの生徒についても親の所得に応じて最大24万円が支給される制度だ。財源確保のため、一方で税金の優遇措置にあたる「特定扶養控除」が削られるという“想定外”の事態はあったが、現場でも一定の評価はされている。

 第2の学校教育力向上では、免許更新制の継続と、教員養成課程の修士化が現場には不評。一方、11年度に小学校1年生でスタートした「35人以下学級」はおおむね好評だ。文部科学省の来年度概算要求では、17年度までに公立小中学校の全学年で実現する案が盛り込まれている。学級人数が従来の「40人以下」から減れば、そのぶん先生の負担は減り、個別に子どもと向き合う時間が増える。

 ただ、手放しでは喜べない。今年度から小学2年でも導入されたが、小学1年とは異なり法改正はされなかった。つまり法律上、小学2年以上はまだ「40人以下学級」のまま。実際、クラスが増えても、教員の補充がなく、少人数学級などの教員がカバーしているケースも少なくない。

 さらに、負担の大きい教員免許更新制については、生みの親である安倍政権が再び誕生するとなれば、制度維持は決まったようなものだろう。

 第3のガバナンス改革に関しても「選挙後」にどうなるか。地域ぐるみで学校づくりを進める「コミュニティー・スクール」は、全国で1100校を超える広がりを見せている。

「事務作業など教員の負担は増えるが、地域の大人の目が学校に入ることはいいこと。いじめの抑止にもつながる」(中学校教師)という評価もある。

 マニフェストにあった「教育監査委員会」については、最近ではメディアに取り上げられてすらいない。文科省内に教委も含めた地方教育行政制度に関する調査委員会が立ち上げられ、田中真紀子文科相が参加するとも言われていたが、立ち消えとなってしまった。

週刊朝日 2012年12月7日号