「暴走老人」と揶揄(やゆ)されたあの人は都政から姿を消したが、都知事選に、一筋縄ではいかない新たな“老兵”が出馬する。元自民党衆院議員の笹川尭(たかし)氏(77)だ。

 笹川氏は衆院議員を7期務め、科学技術担当相や自民党総務会長などを歴任した実力者。前回の衆院選に落選して引退表明したはずが、地元群馬から遠く離れた東京で突如、都知事選への挑戦を表明した。

 だが、自民党は猪瀬直樹副知事の支援を決定。「党内の候補者選定で名前が挙がったことはない」(自民党議員)というように、まるで“泡末”扱いだ。

 そんな中、ひそかに注目されているのが、石破茂幹事長(55)の動向だという。ことは、9月の自民党総裁選に遡る。総裁候補に名乗り出た石破氏が、ホテルニューオータニに選挙対策事務所を構えるにあたり、政界屈指の資産家として知られる笹川氏が数百万円をポンと拠出したというのだ。

「2人は当選同期で、新進党など党を移るときも行動を共にした。笹川さんは“兄貴分”を自任していて、総裁選ではスポンサーを買って出た。石破さんは、あのときカネを出してもらった手前、笹川さんを無視できないんじゃないか」(自民党関係者)

 笹川氏への“恩”を考えたら、都知事選の応援に入るのが筋ではないか――というのである。そこで、石破氏に予定を聞いてみると、「絶対に行きません」とバッサリ。そして、こう続けた。「自分には幹事長として党の職務がある。それに、いくらお世話になっているからといって、『お前、来い』という笹川尭じゃない。そんな小さな男ではない」。

 事実、さすが笹川氏の“懐”は深いようで、こう言って理解を示した。「石破も政党人だからな」。

 金持ちケンカせず!?

週刊朝日 2012年12月7日号