学校現場に「非正規」の先生が増え続けている。文部科学省の調査によれば、公立の小中学校の全教員に占める非正規教員の割合は16.0%にのぼる(2011年度)。少子化で経営難にあえぐ私立高校では全体の36.8%が「非正規」との報道もある。

 全日本教職員組合(全教)の波岡知朗中央執行委員は、非正規増加の問題点をこうまとめる。

「一つは非正規教員の賃金・労働条件が正規と大きな開きがあるという問題。もう一つは、教育そのものの問題です。非正規教員は制度的に研修が保障されていないため、教育の充実をはかるのが困難になっています。また1年契約では教育の継続性が保たれません。非正規が激増し細切れ化が進み、学校の仕組みが壊れつつある印象を受けます」

 正規教員であれば、採用後に「初任者研修」が用意され、学校経営や授業方法について詳しく学ぶことができる。しかし、非正規教員にはその機会がない。東海地方の20代の正規教員にも、苦い経験がある。

「常勤講師1年目、何も研修を受けないまま教壇に立ち、中学2年生38人の担任になりました。周りの先生に教わりながら取り組みましたが、力不足もあって学級は荒れる一方でした」

 つらかったのは、保護者からの信頼も失ったことだという。通常は、正規か非正規かは保護者には伝えられない。でもどこからか情報が漏れ、親が「担任を正規の先生に代えてほしい」と校長に訴えた。校長が矢面に立ってくれ、交代は避けられたが、最後までクラスはまとまらなかった。

週刊朝日 2012年11月30日号