俳優、演出家、脚本家の河原雅彦氏は、「三度の飯より猥談が好きだ」と公言したことがあるが、同じくらいホラー映画を愛しているという。

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 一口にホラー映画といえど、様々なジャンルがありますな。『エクソシスト』に代表されるオカルト系、『13日の金曜日』に代表される血しぶき飛び散るスラッシャー系、『エイリアン』に代表されるモンスター系もあれば、『羊たちの沈黙』に代表されるサイコ・スリラーも外せない。ま、そんな中で個人的に大好物なのが“ゾンビもの”でして。

 ほら、アイツらって他のホラーに登場する怪物と比べて断然バカっつうか、ハッキリ言って何も考えてないでしょ? 見ようによってはその姿がチャーミングに思えるぐらい、ただヌボーッと歩いてるだけで(映画によっては力強いフォームで全力疾走してくる困ったヤツもいますが)、とにかく「生きた人間食いてえ! 食いてえ!」って情熱以外、頭の中はからっぽ。そうなるとドラマは自(おの)ずと極限状態に陥った登場人物達の精神状態やその行動にスポットが当たるわけ。だから、単純におっかないだけじゃなくてね、人間ドラマとしてもゾンビものは十分に見応えがあるのです。

 この手の映画には低予算のクズ作品も多いですが、ちゃちなメーキャップや素人丸出しのゾンビ演技を含め、「それでもゾンビをやりたかったんだ!」という作り手側のおバカなゾンビ愛を微笑ましく観るのもオツだし、『サンゲリア』っていう作品では、ゾンビが鮫と海中でタイマン張ってますからね、結構な長尺で。ガチで本物の人食い鮫に噛みついてやんの。ここまでくると完全に芸人さんだよ。さすがの出川もやらねーっつの。

週刊朝日 2012年11月30日号