福島第一原発事故による放射性廃棄物を受け入れる最終処分場問題が揺れている。作家の室井佑月氏は、原発推進派議員のことを「めちゃめちゃ卑怯」だと言う。

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 野田首相は「決められる政治」って言葉が好きだが、ホント大事なことは決められない人だ。決めるのが怖いんだな。最終処分場に選ばれた地域では、選挙もボロ負けしそうだし。けど、そんなことも言っていられないんじゃない?

 すごいのが、11月8日のMSN産経ニュース。「『政権取れば見直し』自民・茂木氏 指定廃棄物処分場候補地視察 栃木・矢板」

 中身はタイトル通りで、国が指定廃棄物最終処分場の建設候補地に栃木県矢板市の国有林野を選定したから、自民党の茂木敏充衆院議員(栃木5区)が見にいったわけ。で、茂木さんは「(自民党が政権を取れば)候補地選定のプロセスや場所についても見直したい」との考えを表明した。

 めちゃめちゃ卑怯だと思うのはあたしだけかな。

 脱原発を推している党の人間が、「うちに最終処分場を持ってくるな!」というならわかる。でも、原発推進の自民党の議員が、そんなことを言うなんて。あたしも矢板に最終処分場を造るのは反対だけど、おまえが言うなという感じ。

 こうなったらさっさと選挙して、最終処分場は原発推進議員が強かったところで、話し合えばいい。原発を使いつづけるのと、それによってできたゴミの捨て場所を探すことはセットでしょ。

 そうなれば、誰だって自分の住んでいる地域に処分場を造られるのは嫌だから、選挙で原発推進議員は敬遠されるかもしれない。でも、それが一番わかりやすい、しょうがない結論だとあたしは思う。 

週刊朝日 2012年11月30日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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